紅茶の香りがひとの眠りに与える影響について 紅茶の香りがひとの眠りに与える影響について

紅茶の香りで心地よい眠りを

昼間のストレスで緊張が夜まで続いたり、不安なことがあると、眠れなくなることがあります。
脳と身体が眠りに入るときに、自律神経の働きが“交感神経系”優位な状態から“副交感神経系”優位な状態へとスムーズに切り替わることが必要です。夜間は興奮したりストレスを感じて“交感神経系”を高めないこと、心身をリラックスさせることが良い眠りのための大切なポイントになります。
三井農林は、ダージリン紅茶の香りの“交感神経系”を抑えて“副交感神経系”を高める鎮静効果に注目し、筑波大学矢田幸博教授の研究指導のもと、「ダージリン紅茶の香りを眠りにつくときに嗅ぐことでひとの睡眠にどのような影響を与えるのか?」について、臨床研究を行いました。
ここでは、その研究結果の一部についてご紹介します。

紅茶の香りと安眠している女性のイラスト

自律神経とは?

自律神経は、体温、血圧、脈拍、呼吸、血流などのさまざまな生理現象をコントロールする生命維持に欠かせない神経です。
交感神経と副交感神経という正反対の働きをする 2 つの神経が交互に働いてバランスをとっています。交感神経は、身体を動かすときや興奮したときに心拍数を上げてエネルギーを消費させます。 一方、副交感神経は、身体を休めるときやリラックスしたときに心拍数を下げて、疲労が回復するように働きます(左図)。ところが、日中のストレスを受けて夜間も交感神経の活動が高く自律神経バランスが崩れると、眠りにつきにくくなったり、夜中に目が覚めてしまうなど、睡眠に悪影響を及ぼします(右図)。

自律神経は、体温、血圧、脈拍、呼吸、血流などのさまざまな生理現象をコントロールする生命維持に欠かせない神経です。
交感神経と副交感神経という正反対の働きをする 2 つの神経が交互に働いてバランスをとっています。交感神経は、身体を動かすときや興奮したときに心拍数を上げてエネルギーを消費させます。 一方、副交感神経は、身体を休めるときやリラックスしたときに心拍数を下げて、疲労が回復するように働きます(上図)。ところが、日中のストレスを受けて夜間も交感神経の活動が高く自律神経バランスが崩れると、眠りにつきにくくなったり、夜中に目が覚めてしまうなど、睡眠に悪影響を及ぼします(下図)。

イメージ図

眠るときに紅茶の香りを嗅ぐことで睡眠の質が改善する

眠るときにダージリン紅茶の香りを嗅ぐことによって、ふとんに入ってから眠りにつくまでの時間と目が覚めてからふとんを出るまでの時間が短縮し、睡眠効率が向上することがわかりました。
また、起きたときの眠気のなさ、寝つきやすさや睡眠維持、疲労回復、睡眠時間の満足感、総合的な睡眠の質が向上するなどの主観的な睡眠意識の改善が認められました。

<詳細データ>

主観的な睡眠意識を紅茶の香りと水で比較した結果のグラフ 主観的な睡眠意識を紅茶の香りと水で比較した結果のグラフ
図 主観的な睡眠意識を紅茶の香りと水で比較した結果
(上:ピッツバーグ総合スコアの試験期前後変化量、下:OSA 因子スコアの試験期前後変化量)
(N =20, **p < 0.01)
睡眠変数を紅茶の香りと水で比較した結果のグラフ 睡眠変数を紅茶の香りと水で比較した結果のグラフ 睡眠変数を紅茶の香りと水で比較した結果のグラフ
図 睡眠変数を紅茶の香りと水で比較した結果
(左から、ふとんに入ってから眠りにつくまでの時間、目が覚めてからふとんを出るまでの時間、睡眠効率、総睡眠時間)
(N = 20, **p < 0.01, ***p < 0.001)

<詳細データの説明>

就寝時に紅茶の香りまたは水(プラセボ)を超音波式アロマディフューザーで揮散させて睡眠に及ぼす効果を比較したところ、水に比べて紅茶の香りでは、睡眠変数の入眠潜時および離床潜時の有意な短縮、睡眠効率の有意な上昇、総睡眠時間の延長傾向が認められました。
また、紅茶の香りでは、ピッツバーグ総合得点が有意に低下したことから睡眠の質の改善が示唆され、さらには、睡眠時間の満足感も有意に上昇し、起床時の眠気のなさ、入眠のしやすさと睡眠維持、疲労回復感は上昇傾向であったことから、主観的な睡眠感も改善することが確認されました。

<試験概要>

試験デザイン:クロスオーバー試験
対象者:健常女性 20 名(平均年齢 40.0±4.4 歳)、軽度ストレス(ストレススコア:6~10 点)があり、睡眠が良くない(入眠に 30 分以上かかる、中途覚醒がある、起床時の眠気が強い、疲労感が取れていない)と自覚していること、週 4 日以上の日中の時間帯で 1 日 3.5 時間以上働いている勤労者を選択した。
試験品:紅茶の香り(ダージリン紅茶の香りのみを集めた芳香蒸留水)または水(プラセボ)
評価方法:対象者の自宅寝室にて、就寝時の就寝前後 3 時間に超音波式アロマディフューザーを用いて試験品の香りを揮散させた。各期の前後にストレスチェックリスト 30 項目(ストレススコア:主観的なストレス)、OSA 睡眠調査票 MA 版(OSA因子スコア:主観的な睡眠感)、ピッツバーグ睡眠質問票(ピッツバーグ総合スコア:睡眠の質)に回答し、各期 1 週間の睡眠時の活動量から睡眠変数を算出して評価した。

出典:紅茶の香りがストレス意識の高い女性の睡眠に及ぼす効果、日本生理人類学会誌、25(2)23-32(2020)

※評価方法
ストレスチェックリスト 30 項目(SCL30):ストレスに関する 30 項目に回答し、0 点から 30 点までのストレススコアが高いほ ど、主観的なストレスが高いと評価する。
ピッツバーグ睡眠質問票:過去 1 カ月間における睡眠習慣や睡眠の質(主観的睡眠の質、入眠時間、睡眠時間、有効睡眠時間、睡眠障害、睡眠剤の使用、日常生活における障害)に関する 18 質問に回答し、算出した 0 点から 21 点までの総合スコアが高いほど、睡眠の質がより悪いと評価する。
OSA 睡眠調査票 MA 版:起床時の睡眠感と覚醒状態に関する 19 質問に回答し、算出した 5 つの因子スコア(起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、疲労回復、睡眠時間)50 点を基準として、スコアが高いほど、主観的な睡眠感が良好であると評価する。
活動量:活動量計を腹部正面に装着し、計測データから求めた睡眠変数(入眠潜時:ふとんに入ってから眠りにつくまでの時間、離床潜時:目が覚めてからふとんを出るまでの時間、総睡眠時間:入眠時刻から最終覚醒時刻までの時間から中途覚醒時間を除した時間、睡眠効率:総睡眠時間を総就床時間で除した値、中途覚醒時間および回数、姿勢変更回数)を評価

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研究指導者より

矢田幸博教授の写真

筑波大学大学院人間総合科学学術院
グローバル教育院
ヒューマンバイオロジー学位プログラム
矢田幸博 教授 注)組織名、役職等は掲載当時のものです(2023年2月)

三井農林さんから紅茶の香りの有効性評価についてご相談があり、共同研究がスタートしました。
評価が進むにつれて紅茶の香りには、自律神経のうち、交感神経を抑えることで副交感神経を高めて心身を鎮静させる効果があることが明らかになりました。紅茶の中でもダージリン紅茶(ダージリン産の 2 番茶)がもっとも効果が高いことも確認されました。

一方、日々忙しく、ストレスを感じる生活を送っていると交感神経活動が亢進してしまい、不眠、肌あれ、集中力の低下など、悪影響が出てくることが知られています。そこで、紅茶の香りを利用することで、亢進した交感神経を抑え、ストレス意識を低減する効果や睡眠を改善する効果が期待されます。

実際に、ストレスを感じて不眠意識のある方々に、ダージリン紅茶の香りを使用していただくと「ストレスが減った」ことと合わせて「寝つきが良くなった」、「寝起きが良くなった」、「夜間目が覚めなくなった」などの睡眠改善効果が確認されました。
日々ストレスを感じている、眠りが良くないと思われる方は、寝る前にぜひ紅茶の香りをゆっくり嗅いでいただきたいと思います。