紅茶のインフルエンザウイルス感染阻止力の研究について 紅茶のインフルエンザウイルス感染阻止力の研究について

インフルエンザウイルス対策には紅茶!

寒い季節になると、体調管理で特に気をつけたいウイルス対策。
お茶に含まれる成分には、様々なウイルスの活性を奪う作用があることが報告されています。
当社の研究結果と、これまでに報告されている紅茶がインフルエンザウイルスの感染を阻止する効果について、まとめて御紹介します。

① 紅茶はインフルエンザウイルスを撃退する力がすごい!

インフルエンザ対策によいとされている飲み物や食品成分について、インフルエンザウイルスを無力化(細胞への感染を阻止)する能力を比較してみました。その結果、紅茶はインフルエンザウイルスを無力化する能力が高いことが分かりました。一方、インフルエンザ対策として多く飲用されている生姜湯、乳酸菌飲料、ビタミンC飲料は無力化する能力が紅茶に比べ低いことが分かりました。

インフルエンザA/California/07/09(H1N1)pdm09標準株のウイルス液(106 PFU/0.1ml)を試料液と混和し、一定時間反応させた後、プラック法によりウイルス感染価を測定しました(反応時間:紅茶30秒間、他の試料10分間)。感染阻止率(%)={1-(試料の感染価/コントロール(ペプトン20mg/ml PBS緩衝液)の感染価)}×100としました。インフルエンザウイルスに対する感染阻止効果の判定基準は、抗ウイルス加工繊維製品を対象とした抗ウイルス試験方法(ISO 18184)に準じ、コントロールに対して各試料のウイルス量が1/1000以下(感染阻止率が99.9%以上)の場合「十分効果あり」とし、1/100~1/1000(感染阻止率が99.0~99.9%)の場合「効果あり」と判定しました。
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② 紅茶は15秒で効果あり!

ポリフェノールを豊富に含む飲み物について、インフルエンザウイルスを無力化させるのに必要な時間を比較してみました。紅茶は、他の飲み物よりも短い、わずか15秒ほどでインフルエンザウイルスを無力化することでき、ウイルス感染を阻止する能力が極めて高いことが分かりました。

インフルエンザA/Chiba/2/09(H1N1)ウイルス液(106 PFU/0.1ml)を試料液と混和し、一定時間反応させた後、プラック法によりウイルス感染価を測定しました。感染阻止率(%)={1-(試料の感染価/コントロール(ペプトン20mg/ml PBS緩衝液)の感染価)}×100としました。各試料の濃度は、一般的な粉末清涼飲用の飲用時濃度に調整しました。
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③ 紅茶で無力化したインフルエンザウイルスの感染力は復活しない

紅茶のインフルエンザウイルスを無力化する作用があることが試験管レベルで確認されましたが、生体レベルでもインフルエンザウイルスの感染を阻止できるのか確認を行いました。インフルエンザウイルスに感染しやすいマウスに対して致死量のウイルスを経鼻接種したところ、ウイルスのみを接種すると10日後に全てのマウスが死亡してしまいました。一方、ウイルスに紅茶エキスを5分間反応させた後、ウイルスをマウスに接種すると、14日間経過後も死亡することなく全てのマウスが生残しました。このことから、紅茶によって無力化されたインフルエンザウイルスは、生体内においても感染力が復活することはなく、発病を抑制できることが分かりました。

C3Hマウス(1群あたり10匹)を用い、インフルエンザA/WSN/33ウイルス株の感染試験を行いました。紅茶エキスは茶葉2.0g/ PBS緩衝液100mlの抽出液を用いました。
出典:中山幹男ら(1994)感染症学雑誌 68(7) 824-829.
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④ 紅茶の飲用頻度が高いほど、インフルエンザ発病率が低い!

2018年6月に紅茶の飲用習慣とインフルエンザの発病率について、社内アンケート調査を実施しました。先ず、ワクチン接種によるインフルエンザ発病率への影響を検証したところ、ワクチンを接種しなかった人に比べ、ワクチンを接種した人の発病率が57.9%低いことが分かりました。これは、6歳未満の小児を対象とした2015/16シーズンの疫学研究の報告※と概ね一致したことから、ワクチン接種によりインフルエンザの発病や重症化を抑制する一定の効果が現れていたと考えられました。

このため、ワクチンを接種しなかった人369名を対象に、冬季の紅茶の飲用頻度とインフルエンザの発病率の関係を評価したところ、紅茶の飲用頻度が高い人ほど、インフルエンザの発病率が低くなる傾向が見られました。


発病の有無に関する回答結果は自己申告によるものであり、2017年11月~2018年3月の間に、病院でのインフルエンザ陽性診断およびインフルエンザ様の自覚症状があった人を「発病あり(疑い含む)」としました。
※厚生労働省ホームページ インフルエンザQ&Aより
平成28年度 厚生労働行政推進調査事業費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「ワクチンの有効性・安全性評価とVPD(vaccine preventable diseases)対策への適用に関する分析疫学研究(研究代表者:廣田良夫(保健医療経営大学))」による
発病の有無に関する回答結果は自己申告によるものであり、2017年11月~2018年3月末までの間に、病院でのインフルエンザ陽性診断およびインフルエンザ様の自覚症状があった人を「発病あり(疑い含む)」としました。
アンケート調査実施概要
実施日:2018年6月18日(月)~29日(金)
調査対象:三井農林株式会社に所属する社員 442名 (男性:158名  女性:284名)
調査対象期間:2017年11月~2018年3月末
調査形式:飲み物の飲用習慣とインフルエンザ発病に関するアンケート調査(WEB調査)
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⑤ 紅茶は他の感染対策に比べても、簡単で効果的である可能性。

先に実施した社内アンケート調査において、日常的に実施していたインフルエンザ対策方法と発病率の関係を評価したところ、紅茶の飲用は他の対策に比べ、有効率が高い傾向が見られました。

対策名 発病者数/実施者数
(発病率)
発病者数/非実施者数
(発病率)
有効率
ワクチン接種 6/72(8%) 73/369(20%) 58%
紅茶の飲用 9/65(14%) 64/304(21%) 34%
うがい 46/245(19%) 27/124(22%) 14%
ヨーグルト・乳酸菌摂取 8/45(18%) 65/324(20%) 11%
手洗い 59/303(19%) 14/66(21%) 8%
室内の加湿 15/76(20%) 58/293(20%) 0%
何れの対策も実施なし 7/31(23%) 66/338(20%) -16%
ビタミンC摂取 8/34(24%) 65/335(19%) -21%
マスクの着用 44/195(23%) 29/174(17%) -35%
手指消毒剤 15/58(26%) 58/311(19%) -39%
ワクチン接種以外の対策方法については、ワクチンを接種しなかった人のみ(369名)を対象として検証しました。発病者数は、自己申告により、2017年11月~2018年3月の間に、病院でのインフルエンザ陽性診断またはインフルエンザ様の自覚症状があったと回答した人の人数を指します。有効率※は、非実施者の発病率を基準として、実施者の発病率が相対的にどれくらいまで減少できたかを計る指標値で、有効率=(非実施者の発病率―実施者の発病率)/非実施者の発病率*100の計算式で求めました。
※平成28年度 厚生労働行政推進調査事業費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「ワクチンの有効性・安全性評価とVPD(vaccine preventable diseases)対策への適用に関する分析疫学研究(研究代表者:廣田良夫(保健医療経営大学))」による
アンケート調査実施概要
実施日:2018年6月18日(月)~29日(金)
調査対象:三井農林株式会社に所属する社員 442名 (男性:158名  女性:284名)
調査対象期間:2017年11月~2018年3月末
調査形式:飲み物の飲用習慣とインフルエンザ発病に関するアンケート調査(WEB調査)
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⑥ 紅茶ポリフェノールがインフルエンザウイルスのスパイクに付着!無力化します

インフルエンザウイルスの表面は、「スパイク」と呼ばれる突起状の蛋白質で覆われています。インフルエンザウイルスがヒトに感染する際、スパイクが呼吸器粘膜の細胞表面に吸着、侵入するうえで重要な役割を担っています。
紅茶ポリフェノールは、この「スパイク」に付着し、ウイルスが細胞に吸着する能力を奪う力が強いため、ウイルスの感染を阻害し、無力化することが分かっています。

受精から11日目の孵化鶏卵にインフルエンザA/Yamagata/120/86(H1N1)ウイルスを接種し、ニワトリ胚内で増殖させた後、漿尿液から精製・濃縮したウイルスを試験に用いました。緑茶および紅茶から抽出、精製したポリフェノールをウイルスに5分間接触させた後、0.5%ニワトリ赤血球を用いて赤血球凝集能を測定しました。スパイクには赤血球を凝集させる作用があり、ウイルスの赤血球凝集活性の低下は、スパイクの活性が低下していることを示します。
出典:中山幹男ら(1993)Antiviral Research 21, 289-299.

受精から11日目の孵化鶏卵にインフルエンザA/Yamagata/120/86(H1N1)ウイルスを接種し、ニワトリ胚内で増殖させた後、漿尿液から精製・濃縮したウイルスを試験に用いました。紅茶から抽出、精製したポリフェノールをウイルスに60分間接触させた後、MDCK細胞に接触させた場合(左図)、および無処理のウイルスをMDCK細胞に接触させた場合(右図)の細胞表面の様子を比較しました。紅茶ポリフェノールによってウイルスが細胞に吸着できなくなったことが分かりました。
出典:中山幹男ら(1993)Antiviral Research 21, 289-299.

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⑦ 冬のインフルエンザウイルス対策に、紅茶の上手な取り入れ方!

冬の季節には、冷たい紅茶を飲むよりも、心も体もホッと温まる紅茶がおすすめです。また、カフェインレスの紅茶でも、インフルエンザウイルスを無力化する効果は変わらないことが確認されているので、カフェインが気になる小さなお子様や妊産婦さんにはカフェインレスの紅茶がおすすめです。

インフルエンザA/California/07/09(H1N1)pdm09標準株のウイルス液(106 PFU/0.1ml)を試料液と混和し、一定時間反応させた後、プラック法によりウイルス感染価を測定しました。感染阻止率(%)={1-(試料の感染価/コントロール(PBS緩衝液)の感染価)}×100としました。試料液の総ポリフェノール(タンニン)量は酒石酸鉄法により測定し、濃度を調整しました。一般的な紅茶の総ポリフェノール量は100mg/100mlです(日本食品標準成分表2015年度版より)。
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⑧ 2杯目、3杯目の薄い紅茶も有効活用。紅茶うがい!

使い終わった紅茶のティーバッグを捨てるときに、「まだ色が出るのに、もったいない」と思ったことはありませんか?でも、2杯目の紅茶は、紅茶の色は付くけれど、香りが薄くて美味しくないですよね。実は、紅茶の赤橙色は紅茶ポリフェノールの色。使い終わったティーバッグや茶殻にも、紅茶ポリフェノールは沢山残っています。薄めた紅茶を使ってインフルエンザウイルスの無力化する力を調べてみると、通常飲用濃度の10分の1の濃度でも、十分にインフルエンザウイルスを無力化する力が残っていることが分かりました。また、ヒト介入試験により、「紅茶うがい」によるインフルエンザウイルスの感染率を低減させる効果が確認されています。
残ったティーバッグや茶殻を捨てる前に、「紅茶うがい」に活用してみては如何でしょうか?

インフルエンザA/California/07/09(H1N1)pdm09標準株のウイルス液(106 PFU/0.1ml)を試料液と混和し、一定時間反応させた後、プラック法によりウイルス感染価を測定しました。感染阻止率(%)={1-(試料の感染価/コントロール(PBS緩衝液)の感染価)}×100としました。試料液の総ポリフェノール(タンニン)量は酒石酸鉄法により測定し、濃度を調整しました。一般的な紅茶の総ポリフェノール量は100mg/100ml、緑茶の総ポリフェノール量は70mg/100mlです(日本食品標準成分表2015年度版より)。
同一職場域の社会人297人を対象に、紅茶エキス(通常飲用濃度、無糖)を用いたうがいによるインフルエンザ感染抑制効果を調査しました。紅茶うがい群は、朝8時と夕方17時の2回、100mlの紅茶でうがいをし、対照群では何もしませんでした。実施期間は平成4年10月18日から平成5年3月17日までの5ヶ月間とし、実施期間中の両群の交流は認められていました。感染有無の判定は、実験開始時および終了時に採取したペア血清を用いて赤血球凝集抑制反応を行い、抗体価が4倍以上に上昇したものを感染ありと判定しました。
出典:岩田雅史ら(1997)感染症学会誌71(6)487-494.
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