紅茶に続き、緑茶のおいしさを共有するツールとして「緑茶キャラクターホイール」を開発
緑茶の特徴を多くの人と共有するため、世界で初めて緑茶の「香り」「味」「水色」の表現を体系化した「緑茶キャラクターホイール」を開発しました。緑茶ならではの繊細な特徴を伝える上で、同一の観点で「香り」「味」「水色」の特徴をイメージできる、強力なコミュニケーションツールとなります。
緑茶の「香り」「味」「水色」の表現用語の収集
緑茶には、産地・品種・栽培方法・製法によって香り、味、水色の特徴が多様に異なります。今回、煎茶、深蒸し茶、玉露、かぶせ茶、茎茶、蒸玉緑茶、釜玉緑茶、番茶、ほうじ茶、抹茶など、栽培方法・製法が異なる55点を評価対象として選定しました。
まず、当社の鑑定購買部門のティーテイスター、研究開発部門の研究員を評価者とし、緑茶の香りや味について官能評価を実施。緑茶抽出液から感じられる香りや味について思い浮かぶ限りの表現を収集しました。その結果、重複を含む形で香りに関する表現742語、味に関する表現459語を抽出しました。
次に、これらの表現を整理するため、似た意味合いの用語を集約し、共有しにくい香りについては用語に基づいた香りの見本を作成しました。評価者同士で香りの見本を嗅ぎ比べながら議論を重ね、最終的に「多くの人が共感できる」香りの表現を10系統43語に決定しました。味についても同様に8語に集約しました。水色に関しては、緑茶115点を評価対象とし、抽出液の液色と色見本を照合しながら同系色を集約し、表現用語を7語に整理しました。
緑茶の表現用語の体系化
緑茶の表現用語は、「香り」10系統43語、「味」8語、そして「水色」7語をホイール状にまとめ、「緑茶キャラクターホイール」として完成しました。
紅茶キャラクターホイールと同様に、「香り(AROMA)」、「味(TASTE)」、「水色(COLOR)」の3つの分類を採用。「水色」はその代表を示す画像をホイールの外層に配置し、視覚的にイメージしやすい設計としました。「味」については、緑茶独特の味わいや口当たり、飲んだ後に感じるコクやキレを反映した8語を配置しました。
「香り」に関しては、ホイールの内側から2層目に香りの質を表す小分類(例:Green、Dryなど10系統)、3層目には具体的な表現(若葉、きぬさや、柏もち、ゆで枝豆など43語)を配列。特に「香り」の表現では生活環境で触れた香りや食経験に基づく具体例を活用し、伝わりやすくしています。

緑茶キャラクターホイールの活用
緑茶キャラクターホイールの目的は、ホイール内の表現用語を用いて緑茶の特徴を共有し、伝達することです。そのため、用語には私たちに馴染みのある日本語を選び、具体的かつ分かりやすいイメージを伝えられるよう工夫しています。
たとえば、玉露の香りを表す「覆い香」という専門的な表現は、一般的には馴染みが薄いかもしれません。しかし、このホイールでは「海苔や昆布のような磯の香り、すみれのような重厚な花の香り」といった表現に置き換えることで、より親しみやすくなります。
また、生葉の摘採時期による緑茶の特徴の違いも、このホイールを活用すれば明確に表現することが可能です。たとえば、煎茶の香りは「若葉」や「ゆでほうれん草」のような柔らかな青さ、番茶の香りは「青草」や「きぬさや」のような青臭さといった形で、両者の特徴が分かりやすく示されています。生活環境で経験した香りや、馴染みのある食品の表現を活用することで、多くの人に特徴を具体的に伝えることができるのです。
緑茶キャラクターホイールを用いて、さまざまな緑茶の代表的な特徴を評価し、可視化した一例を以下に示します。このように特徴を可視化することにより、言葉だけでは伝えきれない緑茶の魅力をひと目で把握できるようになります。
※本表の評価結果は、各茶種の代表サンプルに基づくものであり、その茶種の全ての緑茶に当てはまるものではありません。
※表中の香り、渋み、旨みにおける■の数は、分析型パネルによる官能評価(5段階評価)の結果です。
※表中のキャラクターホイールによる分析は、官能評価の点数(強弱)に関わらず、抽出液から感じられた香りと味を示しています。