お茶の健康パワー

脂質代謝改善作用(2)

お茶のポリフェノールと脂質代謝

脂質代謝改善作用(1)では茶ポリフェノールのコレステロール低下作用についてお話しましたが、脂質異常症ではコレステロールだけでなく中性脂肪(トリグリセリド)の値も気にする必要があります。それは、高トリグリセリド血症の人がメタボリックシンドロームにつながる要因を多く持っていると言われているためです。
ここでは、カテキンによる中性脂肪低下作用と体脂肪蓄積抑制作用について、私たちの実験結果をご紹介します。

カテキンの中性脂肪低下作用

中性脂肪(トリグリセリド)は肝臓や脂肪細胞の中に蓄えられており、エネルギー源として使われます。食事から油や糖質を摂取しすぎると、肝臓でそれらを原料にして中性脂肪がつくられ、体脂肪として蓄積されます。また、中性脂肪は直接動脈硬化の原因になるわけではありませんが、中性脂肪が多くなると善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールが減って悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールが増えやすくなり、血管を詰まらせる原因となることが知られています。

私たちは、ラードを30%含む高脂肪食にカテキンを1%混合した餌をラットに4週間または10週間与え、糞中脂質および血中脂質への影響を調べました1)。その結果、カテキンの摂取は、糞の排泄量には影響を与えませんでしたが、糞中の脂質重量を有意に増加させました(図1)。
また、血中脂質についても、全脂質量には差はないもののトリグリセリドの値がカテキン摂取群で有意に低下していました(図2)。
このことから、カテキンを摂取することで脂質の吸収が抑えられて糞便への脂質の排出が促進され、その結果として血中中性脂肪の上昇が抑制されることが示唆されました。

図1.カテキンの脂質排出促進作用
図1.カテキンの脂質排出促進作用
*p<0.05, **p<0.01(Control群に対して有意差あり)
図2.カテキンの中性脂肪低下作用
図2.カテキンの中性脂肪低下作用
*p<0.05(Control群に対して有意差あり)

カテキンの体脂肪蓄積抑制作用

肥満とは、皮下や内臓周囲の脂肪細胞に脂肪が過剰にためこまれた状態を言います。私たちはカテキンの体脂肪蓄積への影響を調べるため、ラットとマウスを用いて試験を行い、カテキンが体脂肪の蓄積を抑制することを明らかにしました2)


(1)ラットにおける体脂肪蓄積抑制作用
5週齢のラットに、15% パーム油を添加した餌(Control)、15% パーム油食にカテキンを0.5%または1%添加した餌を与えて4週間飼育し、体脂肪に対する影響を調べました(図3)。
その結果、体重増加量に差はありませんでしたが、体脂肪量は1%カテキン群で有意に低下していました。

図3.ラットにおけるカテキンの体脂肪蓄積抑制作用
図3.ラットにおけるカテキンの体脂肪蓄積抑制作用
*p<0.05(Control群に対して有意差あり)


(2)マウスにおける脂肪蓄積抑制作用
13週齢のマウスを、通常飼料を与える群(Control)、通常飼料にカテキンを0.1%添加して与える群(Control+0.1%カテキン)、5% パーム油を添加した飼料を与える群(パーム油)、5% パーム油食にカテキンを0.1%添加して与える群(パーム油+0.1%カテキン)に分けて3ヶ月間飼育し、体脂肪と血漿トリグリセリドへの影響を調べました(図4)。

その結果、Control群に比べてパーム油群では、体脂肪が過剰に蓄積されていました。しかし、パーム油+0.1%カテキン群では、脂肪の蓄積がControl群と同程度まで抑制されることが分かりました。通常飼料にカテキンを添加した場合には、体脂肪に有意な差はありませんでした。また、いずれの飼料においても、カテキン添加によって血漿中のトリグリセリドの値が有意に低下していました。

図4.マウスにおけるカテキンの脂肪蓄積抑制作用
図4.マウスにおけるカテキンの脂肪蓄積抑制作用
*p<0.05(Control群に対して有意差あり)、**p<0.05(パーム油群に対して有意差あり)


脂質異常を改善するには、運動や食事などの生活習慣を変えることが良いと言われています。食事の質を変える中で、食事のお供にお茶を飲む習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか。


【参考文献】
1)Nanjo, F., Y. Hara & Y. Kikuchi, ACS Symp. Ser., 1994;547:76-82.
2)外岡史子ら, 第46回 日本栄養食糧学会総会 講演要旨集2B-12a, 1992.